セグメントとターゲットの徹底理解
社会人の方でもビジネスに興味がある学生の方でも一度は聞いたことがある言葉「STP戦略」。
知らない方のために念のためざっくり説明すると、STP戦略とは「何かしら事業をするときは市場をセグメント(細分化)し、その中からターゲットを決め、競合がいる中でのポジショニングを考えましょうね」というものです。
これは本当によく聞くビジネスの基本なのですが、実はこれって古いんですよね。
今回は古臭いSTP戦略ではなく現代ビジネスで使えるセグメントとターゲットの考え方について話していきます。
この記事を読み終わるころにはあなたは事業の利益が最大化できるようになり、軌道修正も容易になり、ビジネスの勝率がぐんと上がることでしょう。
まずはセグメントについて
まずはセグメントについて考えていきましょう。
一言でいえばセグメントとは「市場を分割すること」です。例えば飲み屋市場があったとします。一口に飲み屋市場といってもビールが好きな人もいれば日本酒が好きな人もいる。ワインが好きな人もいればウイスキーが好きな人もいる。このように飲み屋市場の中でもいろいろ分けられるんですね。
別に分けなくてもよくない?ビールも日本酒もワインも全部出せばいいのでは?と思う方もいるかもしれません。
なぜ分けるのか。ズバリ最小予算で最高効果にするためです。何かしら事業を始めるうえで必ず資本金・事業資金というものが必要です。それなのにすべての人のニーズに応えようとするとどうでしょうか。コストが莫大にかかりますよね。
先ほどの飲み屋の例で言うと、ビールだけに絞るのではなく日本酒もワインも出せばコストは単純計算で3倍になります。
したがって飲み屋市場という大きな市場を日本酒専門店・ビール専門店というように人のニーズに基づいて分割することが必要なんですね。
ではどのように分割していけばいいのでしょうか。100人のうち1人がビールが好きだからと言ってビールの市場を作っていいのでしょうか。そうではないんですね。
つまりセグメントを切っていくには根拠が必要になってきます。ここが今回の記事で一番重要なポイントです。特に根拠もなくなんとなくセグメントしている人って意外と多いんですよね。
コスパを最高にするセグメントのやり方
セグメントをする際は「市場を分割しても存在するのか」ということを考えなければなりません。
ここで大事になってくるのが4つの変数です。
人口変数・地理変数・心理変数・行動変数を合わせて4つの変数といいます。
一つ一つ説明していきます。
4つの変数① 人口変数
まずは人口変数についてです。
事業をしようとしている地域に何歳ぐらいの人が多いのか、老人が多いのか、若者が多いのかという情報はとても重要です。
例えばあなたは老人が多い地域におしゃれなエステを出しますか?出しませんよね?おそらくこの地域におしゃれなエステがあってもなかなか売り上げは見込めないでしょう。
整体が郊外に多いのはこのためです。お年寄りの方からすればおしゃれなエステよりも整体の方が需要があるんですね。
このように世帯・職業・性別・年齢といった要素によってコンセプトを決めるのが人口変数に基づく考え方です。
4つの変数② 地理変数
次は地理変数についてです。
事業をしようとしている地域はどのような地域なのかというという情報はとても重要です。
例えばオフィス街のコンビニにお米が置いてあるのを見たことがありますか?おそらくないと思います。逆に住宅地にあるコンビニではお米を置いていたりしますよね。では逆に住宅街の居酒屋で立ち飲み屋を見たことがありますか。都市部の居酒屋では立ち飲み屋も珍しくないですが住宅街ではなかなかないですよね。
このように地域に基づいてお店のコンセプトや品揃えを決めるというのが地理変数に基づく考え方です。
4つの変数③ 心理変数
続いて心理変数です。
事業をする上で人の考え方を知ることはとても大切になってきます。
例えば地球環境が大事!オーガニックなものじゃないと食べない!ベジタリアンだから肉は食べない!という意見は最近増えていますよね。これらのような特別なケースではなくても、「自販機で150円使うのはもったいないけど女性とのデートでは迷わず1、2万円払う」という考えは男性ならわかる方が多いのではないかと思います。
このようにメンタルアカウンティングなどを重視しビジネスを展開するというのが心理変数に基づく考え方です。
4つの変数④ 行動変数
最後は行動変数です。
簡単に言うと人の行動を理解することが大事だよねということです。
例えばタクシーに乗るとき、乗り心地を求める人もいればスピードを求める人もいますよね。スピードを求めている人はドライバーがドアを開けるサービスは求めていません。それ以外にも同じお店をリピートする人と新しいお店を開拓する人がいるように同じサービスを利用する人のなかでも様々なタイプが存在します。
このようなことを考慮に入れて市場を分割するのが行動変数に基づいた考え方です。
以上4つの変数を説明してきましたが、要するに市場をセグメントするときはそこにどんな職業の、どんな年齢層の、どんな考え方・行動をする人が多いのかを考慮する必要があるということですね。
次にターゲットについて
これまでセグメントについて説明してきたので続いてターゲットについて説明していきます。
一言で言うとターゲットとはズバリ「セグメントを分ける際の根拠となるもの」です。
よくある間違いとしてセグメント化してターゲットを選び、さらにターゲットを絞り込んでしまうというものがあります。
例えばあなたが美容室のオーナーだとします。美容室市場をカットやカラー、セット、相談などとセグメントし、ターゲットをカットにしたうえでさらに年齢や性別で絞り込んでしまうと、これは再びセグメントしていることになります。これは無駄な絞り込みです。
あくまでセグメントを分ける際の根拠となるものがターゲットです。
ターゲティングの6R
マーケティングには頻出の頭文字をまとめるシリーズです。4Cや4Pなどは有名ですがここでは6Rについて説明します。
この6Rとは勝つ市場を選定する基準となるものです。
・Realistic scale:市場規模
・Rate of growth:成長性
・Rival:競合状況
・Rank:優先順位
・Reach:顧客への到達可能性
・Response:反応の測定可能性
簡単に言うと、お客様のニーズはあるのか? どこにあるのか? そのお客様になる方はどんな人か?を調べ分析をしていく考え方です。
特に、頭3つのRが大事だと思います。
Realistic scale: 市場規模
当然ですが、市場規模が大きければ利益をもたらす可能性は大きくなります。
もし市場規模が小さくても一定層の人々に絶対的な信頼があれば安定した供給ができます。ニッチ分野というやつですね。
例えば自動車会社のスバルはホンダやトヨタほど大きな会社ではありませんが一定層に強い人気がありますよね。
ですが、その市場に競合業者や新規参入業者が入ってくる可能性もあります。
また、成熟市場であるならば、ポーターの競争市場における規定要因も視野にいれて考えていく必要があります。
1.既存の業者間の競争の強さ
2.潜在的新規参入業者の脅威
3.代替製品、サービスの脅威
4.原材料などを供給する売り手の交渉力
5.買い手の交渉力
このあたりを視野に入れておかないといけないんですね。
Rate of growth: 成長性
今後成長をしていくフィールドかどうか?ということです。
今は市場が小さくても今後大きくなる可能性のある分野がある一方で、今は市場が大きくても今後縮小していく分野もあります。
例えば製薬業界の営業は今は多くのメーカーは自前の営業さんを持っていますが、今後コスト面と日本の人口減少を考えると外注スタイルに変更しながら営業の総人員は減っていくであろうと思われます
成長性を分析する際にはPEST分析も必要になります。
P:Political 政治的 法規制 税制 政治の動向など
E:Economic 景気動向 物価動向など
S:Social 社会的 人口動態 世論の動向 流行 教育水準など
T:Technological 技術的環境要因 技術開発への投資 新技術の普及度など
市場の成長・衰退には外部環境の要因で左右されることがよくあるのでPEST分析をして外部環境に目を向けておくことが大事なんですね。
Rival: 競合状況
今のライバルは?今後のライバルは?
競合となる企業や商品・サービスがどのくらいあるかを知っておくことはとても重要です。
Rank: 優先順位
自分の所のサービスや製品がお客様から関心をもってもらえるか?自社よりも他社の方が魅力的か?自社が1位なのかそれ以下なのか?
優先順位が低いのであれば製品やサービスの見直しが必要です。
Reach: 顧客への到達可能性 Response: 反応の測定可能性
お客さまへのアプローチがどのくらい届いたかを判断する必要があります。その際に客観的に判断できるように数値を根拠として判断することが大切です。
まとめ
今回はセグメントとターゲットの徹底理解というテーマで説明しました。
自社の強みをしっかりとつかんだうえでターゲットを根拠として市場をセグメントすることが大事ではないかと思います。間違ってはいけないのが ターゲッティングを更にターゲッティングしてしまうことですね。